Don’t speak. Feel. (Read.)
- 作者: 小川洋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/08/28
- メディア: 単行本
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書評(とは言えないだろうけど)が続いてしまいますが、この本。昨日買いました。第51版だった。すごい。
交通事故の影響で80分間分しか記憶を保てなくなった博士と、そこの家へ配属された家政婦さんとその息子の話。メメントー?と思いましたが、買ってみました。だって!ずっと前から色んなところで“半端なく”お薦めされてたから!タイトルもなんかひかれるものがあるし。あとメメント観たことないし。
以下は感想。読んでない人は読まないで欲しいです。大したことは、まっっったく書いてないですが。ていうか小学生の読書感想文よりひどい。支離滅裂としか言いようがない。ので読まないで!(何なんだ)
*
常に記憶を失くしていってしまう老博士。彼の持つ慈愛や、悲哀、悲痛が、家政婦(主人公)の視点を通して描かれている。(一人称視点の小説が結構好きなんだな俺) 俺が読んだところそんな作品なんですが。
泣ける、というより、グッとくる。すごいと思った。まずその設定の妙。そのキャラクター設定も、完全数という聞くからに興味深い数字を生かした時代設定も、ちょうど完璧な数式に似た美しさを放っていると思う。そしてそれを支える奥深い数学の知識。かなり勉強したんだろうな。もうね、なんだこりゃー、と。これセカチューと100円しか変わらないんですよ。
この本を読んで一番俺が心動かされたところは、公園の砂場の場面、その最後の段落でした。そこってまだ半分ぐらいのところだったんですけど、あの文のために今までのお話はあったなーってぐらいグワーってキた。もう博士に感情移入したし、主人公(家政婦)に感情移入したし、そして情景描写の美しさですよ。ホントすげぇなって思いましたよ。 もうこの辺で元手は取った。(また金。)
後半から見られる、すべてを語らない語り口もすげぇ好きです。この本を読んでたら俺はあの有名な、ウィトゲンシュタインの『論考』を思い出しました。ウィトゲンシュタインも、この世の真理を結構数学的に表そうとした人なんですけど。彼曰く、
六・四二
・・・・・・ 命題は高貴な事柄を、なに一つ言い表すことができない。
六・五二
言い表せないものがあるのは確かなことである。それは自ら顕れる。それは神秘である。
七
語りえないものについては、沈黙しなければならない。
オイラーの公式があの場面で何を意味したのか。
博士と、その義姉である未亡人、その関係について。
いずれも直接書いてあるところはない。だけど滲み出てくるものは確かにある。(そういうのが大好きなんだなー俺) むしろ謎を謎のままにおいておくことで、その深みは表現されているのだと思う。
数学者は宇宙の秘密を解き明かしていく。けれど人の心の裡はやはり誰にもわからない。
それはひとつの神秘であり、語られるべきではないものなのだ。